変わってくこと変わらずにいること
Movable things and immovable things
「知力」 「体力」 「徳力」
これら三つの力を育むことが教育と言われる。
私が教育者を目指した理由は、「徳力」のみにあるといっても過言ではない。若者たちの徳力を鍛えることこそが私に与えられた使命だと信じ、ひたすら人格教育に専念してきた。
徳力という果てしもない大きな概念を伝えるにあたり、
「人に親しみ人に親しまれる人間育成」
を教育理念に掲げた。
人と心を持って接することを、人によって自分が生かされているということを、ひたすら訴えてきた。
「気持ちの良い挨拶」 「感謝の気持ち」 「友達を大切に」
これら三つのメッセージを、念仏のように唱えてきた。
来月、教師10年目を迎える。
知力や体力と違って、徳力の向上は目には見えない。私自身、人としても未だ未熟な上、己の徳力はと問われれば、甚だ心許無い。
そんな中で、人と接すること、人と交わること、人とぶつかり合うことを、強調してきた。時間を惜しむことなく、膝と膝を交えること、地道に向かい合うことの大切さを諭してきた。
時代の変遷とともに、若者たちのコミュニケーションスタイルは大きく変化した。
「膝と膝と交える人付き合い」を体感する環境が、急速に消滅した。
人とどう接していいのか。
交わるとはどんなことなのか。
ぶつかり合うというのはどうするのか。
デジタルコミュニケーションの到来までは当たり前だったことが、現代の若者たちにとっては謎となった。
この謎を解き明かし、人との交流の醍醐味を全身全霊で感じる身体を育み、徳力へと繋げるために、私自身も変わってくことが必要なのだろう。
来年度から、担当授業の手法と、自主ゼミの運営方法を、大きく方向転換する。人が変わらずにいなければならないものに気付いてもらうために。
−大事なのは、変わってくこと変わらずにいること− by槙原則之
