夕子ごめん

Sorry, Yuko

今の私を最もよく知る人間。それは間違いなく妻の夕子であろう。

丁度10年前の夏、東京のある居酒屋で彼女と出逢った。身も知らない彼女に出逢った瞬間、「結婚する相手だ」と思った。
それから7年後、私の直感は現実のものとなった。

結婚式の披露宴で、彼女は私のことを次のように語った。
「時に尊敬できる人生の先輩、時に頼りがいのあるお兄さん、
時に頭を悩ませる弟、時に甘えん坊の子供」だと。
実の両親でさえ知らないような顔を、彼女はたくさん知っている。

先日仕事で東北地方に出向く機会を得た。車窓からの自然は秋を告げ、もの思いに浸るには充分過ぎた。

「そういえば最近の俺って、夕子にどんな顔してるんだろう。。。」
ふっと冷静に振り返った。

そこには、「弟」と「子供」いや、もっと幼稚で自己中心な「駄々っ子」しか存在していなかった。
急に妻への愛おしさと、懺悔の念が込み上げてきた。
胸が苦しくなった。

今の私は「教育」の虜だ。目の前の若者たちに一所懸命で、自分の目指す教育に一所懸命で、妻へのいたわりが疎かになっていた。若者たちに見せる元気でエネルギッシュな顔は、妻の前では無くなっていた。
最も大切な人に、優しさと思いやりを忘れてしまっていた。

東北の大自然を車窓に拝みながら、結婚パーティで妻に捧げた歌を口ずさんだ。

   君が二十歳になったばかりの

   あの夏の夜

   僕は君に出逢った

   その瞬間 身体中の鼓動を感じた

   僕の運命の人と

   あれから7年

   君を愛し続けた

   そして今日

   僕は ここで再度君に誓うよ

   I love you forever, My sweet heart

   I love you forever, Yuko


今度例の場所でデートしよう。
もちろん、僕のおごりで。

2002年9月
#037 夕子ごめん
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