酒学 ―その2―

Sakegaku -Vol.2-

帰国後、当然のごとく酒を飲む機会が多くなった。
武半船長との約束(独り言Vol.21 :酒学−その1−ご参照)
「酒に飲まれるな」という教えをいつも頭の片隅に置いていた。

「おまえはほんとにどんなに飲んでも変わんねーな。」
「お酒ほんとに強いね。」
「どんなに飲んでもきちんとしているわね。」
このような言葉は、いつしか私にとっては当然のこととなり、心のどこかでは、それを自慢としていた。
「おまえに飲ませる酒はもったいない。」、「面白みがないなー。」
なんて言葉もよく言われたが、たいしたこととして受け止めていなかった。

千葉大学に奉職してから、かれこれ4年の月日が流れた。私はキャンパスから徒歩10分ほどの住宅地にある居酒屋「青柳」さんによく足を運ぶ。料理のおいしさや店の雰囲気もさることながら、マスターの人間性に惹かれ、今ではゼミ生たちにとっても、なくてはならないお店となっている。

「青柳」さんで飲んでいても、「いつもきちんとしているね。」、「酔うことはあるの。」、「たまには羽目外さないともたないよ。」
などと言われることもしばしばだ。もちろん、私も酔ってはいるのだが、やはり、「飲まれるな」という教えがいつも頭の隅から離れないでいるのだろう。他人様から見ると、全く素面の状態に見えるようだ。

お酒を提供するお店では、お客の酒の「阻喪」はつきものである。私からすると完全に酒に「飲まれた」状態のお客もたまに見かけるのだが、マスターはいつも笑って、「よーしよし、人間らしくていい」と、気にも留めない様子である。そして、どんな酔っぱらいも、マスターにかかると、魔法にかかったように素直な子供と化す。いつも感心してしまう瞬間だ。

ある日、マスターと何気ない話をしていたときだ。
「お酒に飲まれることと、お酒に酔うことはちがうことなんだよなー。」
と、ふっとおっしゃった。
私は、ハッとさせられた。

自分は今まで「お酒に飲まれるな」ということばかりを気にしすぎて、「お酒に酔う」という本来の楽しみを味わってこなかったのではないか。
そういえば、酒に「飲まれた」状態は非常に醜いが、酒に「酔った」状態は微笑ましい。特に、親しくしている仲間や後輩、学生達が酔っている姿は、自分に心を許してくれているようで、何とも嬉しいものだ。誰かのために宴席を設けても、その主役が酔わなかったら、なんとなく場がしらけるってこともよくあることだ。

「面白みがない」

今まで何とも思わなかったこの言葉が、重く感じる瞬間だった。

今、お酒に対する考え方を少し変えている。
「酒に飲まれるな」という武半船長からの教えは守りつつも、
「お酒に酔う」ということを学んでみよう、自分が酔っても構わないと判断される場面では、時には思いっきり酔おう! そう思っている。

一度、キャンパスでベロンベロンに酔っぱらったことがある。(オフレコ(笑))
ゼミ生達が、私に内緒で婚約パーティーを企画してくれたときだ。
「主役の俺が今日酔わなくてどうする。今日は酔うぞ!」
嬉しくて嬉しくてはじけた。飲んだ。語った。酔った。記憶をなくした。
朝起きたら、研究室のソファーで寝ていた。ベルトとネクタイは緩められ、身体には毛布がかけられていた。靴もきちんと揃えて置いてあった。
「先生、冷蔵庫にお水と牛乳、それからサンドイッチが入っています。」と書いたメモが残されていた。嬉しかった。

この「事件」は、今でもゼミ生たちの笑い話である。
しかし、私の「酔った」行為に不愉快な思いを抱いた者は誰もいないと信じている。 (だよね〜???)

これからも、酔うときはしっかり酔いたいと思う。

お酒ってほんとに難しい。
独り言「酒学編」は死ぬまで更新され続けるだろう。

*居酒屋「青柳」 千葉市稲毛区黒砂台1-11-21 電話:043-247-1505

2001年6月
#022 酒学 ―その2―
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